【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
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放課後のアスファルトは、蒸気みたいに熱を吐いていた。
部活の疲労は心地よいはずなのに、黒尾は妙に胸の奥だけ落ち着かなかった。
(……また来ちまった。)
理由は分かっている。
喉が渇いたわけじゃない。
偶然でもない。
——会いたいと思ったから。
会ってしまえばまた何かが始まるって、分かってたはずなのに。
視界の先、木陰の下に佇むキッチンカー。
白いカウンターに涼しげな飾り。
そしてその奥に、まどかがいた。
黒尾が近づくと、彼女はすぐに気付いて微笑んだ。
「また来てくれたんだね。このドリンク、本当に好きなんだ?」
黒尾は視線を逸らしながら、いつもの調子を装う。
「……まぁ。好きな人が、気に入ったんで。」
なんでこの人にも仁美にも言い訳しているのだろう。
胸の奥から嫌な気持ちが込み上げてくるようだった。
まどかの指先が、カップに氷を落とす音。
その横顔は、どこか疲れた影を宿していた。
「そっか。その子、幸せだね。」