【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
黒尾の背筋がざわついた。
(……なんだよ、その顔…。)
カップを持っているまどかの指に結婚指輪がキラリと光る。
彼女が“弱さ”を隠して笑う、その癖が視界に焼き付いた。
「はい……大事にしてあげてね。」
そう言ってカップを差し出した腕に見える青黒い痣。
黒尾の胸がざわりと波立つ。
救いたいのか、掴みたいのか。
弱さに惹かれているのか、寂しさに寄り添いたいのか。
——いや、どれでもない。
ただ、離れられなかった。
––––
––––––
その日は、いつもより遅い時間まで練習があった。
黒尾はまた、例のキッチンカーに向かった。
自分でも理由は分かっていた。
喉が渇いただけなら、コンビニで済む。
欲しかったのは——
ジュースじゃなくて、あの人の声だった。
まどかは閉店準備をしていたが、黒尾に気付くと驚いた顔をした。
「え、今日も来たの?すごいね。」
その笑顔の頬に、薄く青い痣が滲んでいた。