【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
黒尾の腕の中は、ずっと求めていた場所のはずだった。
なのに–––。
仁美は喉の奥で息を呑んだ。
心の中で言葉が渦を巻く。
黒尾の言葉に応えたら、全て元通りになれるんじゃないかと思った。
辛かった気持ちも、ずっと好きだった想いも、3人でいた時間も–––。
(全部、解決する……はずなのに。)
そう思うのに、唇は動かない。
「仁美……。」
優しく呼ばれた名前に、胸がきゅっと締まる。
声が出ない。
俯いて、唇を噛む。
「……クロ。」
震える声で呼ぶ。
「ごめん……いま、答えられない。」
黒尾の腕がぴくりと強張る。
その表情は見られない。
見たらきっと泣いてしまうから。
「……入試が終わるまで……待って。」
黒尾はゆっくり仁美から体を少し離した。
じっと見つめてくる瞳に、焦りと痛みと、手放せない熱が混じっている。
「……うん。待つよ。どれだけでも。」
黒尾の指がそっと仁美の髪を耳にかける。