【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第7章 Obsession
ぼんやりと胸の奥が痛むまま、仁美は視線を落としていた。
黒尾の言葉の重さも、温度も、まだ整理できない。
そのとき。
黒尾の指がそっと仁美の頬に触れた。
泣いた跡をなぞるように、優しく–––。
次の瞬間、唇が重なる。
勢いではなく、ゆっくりと、塞ぐように。
まだ泣いてしまいそうな心を攫うみたいに、黒尾は深く息を飲んでいた。
唇が離れる。
近すぎる距離で、黒尾の黒い瞳が仁美だけを映している。
「仁美……俺と付き合って。もう絶対に、仁美以外見ない。」
強く誓うというより、自分に言い聞かせるみたいな響きだった。
けれど瞳の奥には、熱と執着が真っ直ぐに燃え続けている。
「他の誰にも触れない。他の誰の名前も、呼ばない。」
そっと仁美の頬を包む手が震えていた。
今度こそ失うまいとする強さと、失うかもしれない恐怖が混じった震え。
「……仁美がいなきゃ、俺だめなんだよ。」
こぼれた声は、切実で、脆かった。