【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第6章 No One’s Yours
散らばった衣服と、乱れたシーツ。
湿った空気が、さっきまでの熱をそのまま閉じ込めている。
研磨はベッドのヘッドボードに背を預け、薄暗い部屋の天井をぼんやりと見上げていた。
その隣で、仁美はシーツを胸元まで引き寄せ、乱れた呼吸を静かに整えている。
「……今、クロがこの部屋に入ってくればいいのに。」
仁美の心臓がひときわ大きく鳴った。
(……クロは……帰って来なかった……。)
研磨と二人きりになってから、どれだけの時間が経ったのだろう。
あの人を優先した黒尾は–––。
最後まで、この部屋の扉を開けることはなかった。
黒尾が2人の関係を知らなかったわけじゃない。
きっと、知っていて、それでも戻ってこなかったのだ。
胸の奥が、じわりと痛む。
息が詰まるような、鈍い痛み。
でも、不思議と涙はもう出なかった。
仁美はシーツを強く握りしめる。
握りしめたシーツに落ちる影が、かすかに揺れた。
その手を、研磨の腕がそっと包み込む。