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❁✿✾ 依 依 恋 恋 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第3章 依依恋恋 三話



それでも、彼女をああして見送ってしまうのは、五百年前の記憶が今でも鮮明に脳裏へ蘇るからなのかもしれない。

「……別に好み云々関係なく、あんたから貰ったものなら何でも喜ぶよ、あの人は」

家康が小さく零した科白は兼続にも当然聞こえていたが、彼は何も口を挟まなかった。その沈黙は肯定と同義であり、活気に満ち始めて来たオフィス内で二人だけは暫し沈黙を保ったままなのであった。



約束の十一時よりほんの少し前、何とか無事に光秀の自宅へ到着した凪は、手土産の紙袋とバッグをそれぞれ持ち、門前で気合いを入れ直した。前回は訪ねて早々、光秀の従兄弟だという光忠から暴言を吐かれた為、何を言われてもメンタルを保てるように予め心構えをしておく。

ちなみに凪が今回手土産として選んだのは、バスクカップチーズケーキだ。その名の通り、バスクチーズケーキを手頃なカップケーキサイズにしたものであり、これならある意味で腹も膨れるだろう、と凪が懸命に悩み抜いて決めた一品である。決して、誓って、自分が食べたいからと選んだ訳ではない。

(先生、チーズケーキがそもそも苦手だったらどうしよう……)

割りと万人受けすると思って選んだものだが、好みがまるで把握出来ていない為、やや不安は残る。今後の参考として、さり気なく食の好みを探る事も視野に入れた凪が黒門のインターホンを鳴らして敷地内へ入った。そうして再度扉横のそれを押そうとしたところで、ロックの外れる音が響く。

「呼び立てて済まなかったな」

姿を見せたのは光秀本人であった。藍鼠(あいねず)色の羽織に月白(げっぱく)の着流しをまとう男の姿は、昨日の今日であっても見惚れるくらいに端正で完璧だ。光忠の毒舌を覚悟していただけに、若干拍子抜けのような心地で目を瞬かせた彼女を見て、光秀が可笑しそうに笑みを滲ませる。

「出迎えが光忠でなかった事がご不満だったか?」
「!?い、いえ……!!先生自らが出られるとは思わなかったので、ちょっとびっくりしたというか」
「普段は直接出る事はないが、今日はお前が訪ねて来ると予め知っていたのでな。取り敢えず、中へ入るといい」
「ありがとうございます。お邪魔します」

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