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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第88章 淋しい夜〜冨岡義勇


騒然とする無一郎の屋敷。隠たちの慌ただしい足音と、飛び交う怒号に近い報告の声。

「ゆきさん、ここは我々に任せてください。貴女はいつも通り、水柱様の元へ稽古に…」

常駐の隠が、不安に震えるゆきの肩を優しく叩いた。「夕刻にお戻りになる頃には、きっと時透様も帰っていますよ」

その言葉に、ゆきは力なく頷くことしかできなかった。


義勇さんなら…柱同士、何か知っているかもしれない

一筋の希望に縋るように、ゆきは夜明け前のまだ少し薄暗い道を、義勇の屋敷へと走った。

義勇の屋敷は、まだ早朝なので静かだった。ようやく隠たちが動き出す時間…。勝手知ったるかつての住処を、ゆきは迷わず奥へと進む。

「義勇さん…義勇さん?」

ふすま越しに、震える声で名を呼ぶ。返事はない。

だってまだこんな早朝だもん…

だけど、ゆきには余裕がなくなっていた…そっと指先で、障子を引き開ける。

そこには、まだ眠りに落ちている義勇がいた。

規則正しい呼吸、わずかに乱れた髪。その寝顔を見つめるうち、ゆきの視線は寝間着の袖から覗く右腕に目が止まった。

白く巻かれた包帯。それは、あの日自分を庇った時に出来た傷…。

私のせいで…。まだ、こんなに痛々しい…

込み上げる申し訳なさに耐えきれず、ゆきは側に膝をついた。
そして包帯にそっと指先を触れさせる。

その瞬間だった。

「 何者だ!」

鋭い声と共に、視界が反転した。

凄い力がゆきの手首を捕らえ、そのまま畳へと押し伏せる。

「あ、あの…わ、私です…ごめんなさい…」

「…ゆき?」

義勇はハッと我に返ると、すぐにその手の力を緩めた。

「すまない…。怪我は、ないか」

離れるどころか、さらに顔を近づけて、義勇はゆきの頬に触れた。組み伏せたままの体勢で、二人の吐息が重なり合う。

「無一郎くんが…帰ってこなくて…義勇さんなら柱同士何か共有しているのではいかと思って…」

目の前で、涙を流しているゆき…時透が戻らず不安でこんな早朝から俺の所に来たのか…?

「時透の情報は鴉からは残念ながら何も来ていない…だが案ずるな。あいつがそう簡単に死ぬはずがない」

俺の腕の中でゆきは、弱々しく泣いていた…。



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