第87章 口付け【R18】冨岡義勇
ゆきは不死川から贈られたおはぎを、大切そうに胸に抱えた。
その場に漂う甘い香りと、ゆきの笑顔。
それを見た瞬間、義勇の嫉妬心に火がついた。
「ゆき、帰る前に少し部屋に来い」
義勇はゆきの手首を掴むと、自身の部屋へと連れて行った。
「あの、義勇さん…? 何でしょうか」
部屋に入るなり、義勇は棚の引き出しから手慣れた様子で湿布薬を取り出した。
「背中…一人では貼れないだろう。俺が貼ってやる」
「だ、大丈夫です! 」
後ずさるゆきを、義勇は逃がさない。
容易くその身体を捕まえ、背後から包み込むようにして動きを封じた。
義勇の指先が、隊服のボタンに掛かる。一つ、また一つと、ボタンが外されるたび、ゆきの心臓が煩く騒ぐ…
やっぱり、今日の義勇さんはおかしい…。昔、私たちが想い合っていた頃のような…そんな感じがする
だけど、駄目だよ…義勇さんには、しのぶさんがいる。こんな事、恋人がしていたら嫌だよ…自分以外の女性の服を脱がせるなんて…
「義勇さん…もういいです。帰って、無一郎くんにしてもらいますから」
無一郎の名を聞いた途端ぴたり、と動きが止まった。
「…そうか。わかった」
消え入りそうな、小さな声…。そのまま義勇は固まり、動かなくなった。
そのあまりに寂しげな横顔に、ゆきの胸に罪悪感が芽生える。
「…義勇さん。ごめんなさい。やっぱり…お願いします。ただし、自分で脱ぎますから」
そう言って、ゆきは震える手で隊服を脱ぎ、肩を露わにした。
柔らかな背の曲線。その白い肌の中央に、義勇が稽古でつけてしまった痛々しい痣が、浮かび上がっている。
「すまなかった…」
声が響くと同時に、背中に柔らかい感触がきた…。
湿布を貼るよりも先に、義勇は、その痣へ愛惜を込めた口付けを落としていた。
「っ…!」
ゆきの背が、ビクンっと、跳ね上がる。
「義勇さん!?」
「黙って…」
今度は、優しく痣を指で撫でてくる…
「ちょっと…義勇さん?」
これ以上は、ここに居てはいけないとゆきは、そう思い慌てて隊服を着た。
「まだ貼れていない」
「帰って無一郎くんに、貼ってもらいます」
義勇から背を向けて急いで隊服を整えるゆき…