第77章 私は誰が好き?〜時透無一郎 冨岡義勇 不死川実弥 【R強】
宴の席へ戻る直前、ゆきは立ち止まり、震える手で必死に涙を拭おうとした。
これ以上、美月に惨めな姿をさらしたくないという意地。しかし、赤く腫れた目元は隠しようがなかった…。
そんなゆきの様子を見て、不死川は舌打ちを一つ落とした。
「下手くそォ。余計に赤くなってんだろうが」
そうぶっきらぼうに言うと、不死川は迷いなく自分の隊服の袖を伸ばした。
ざらりとした丈夫な生地が、不器用に、優しく涙の跡をなぞった。
「俺の後ろに隠れてろ。誰にも何も言わせねェ」
普段の荒々しさからは想像もつかない献身的な仕草と、守り抜こうとする力強い視線…その一瞬の優しさに、ゆきの胸は不意にきゅんと高鳴った。
えっ?何この感じ…こんな時に…私…
「ゆき中入んぞ!」不死川さんが、私を背中に隠しながら戸を開いた。
宴の席へ戻った瞬間、空気は一変した。食糧庫に閉じ込めたはずのゆきが不死川の後ろから現れたのを見て、美月は息を呑んだ。
えっ?何で…もしかして…風柱様が…ゆきさんを出したの…?
不死川の荒々しい威圧感に圧倒され、美月は顔を上げることすらできなくなった。
「ゆき、ここに座れ」
不死川に促されるまま、ゆきは彼の隣に身を寄せた。本当は義勇の隣へ行った方がいいと思ったが、義勇の隣にはしのぶがぴたりと寄り添っており、入り込む隙など微塵もなかった。
「目の腫れが、引いてきたら冨岡の隣に座ればいい…ただ…胡蝶が離れそうにねェな…」
ゆきが、やっと戻ってきたのを見て無一郎が、隣に行こうとするが、美月が邪魔するように無一郎を、引き止める。
美月は潤んだ瞳で無一郎の袖を掴むと、わざとらしく足元をふらつかせた。
「無一郎様…お酒を間違えて飲んでしまい、少し外の空気を吸いたくて」
無一郎は一瞬、隣の席へ戻ったばかりのゆきへと視線を向けたが、美月の必死な様子に根負けした。
「仕方ないな。」
無一郎は、彼女を支えるようにして中庭へと続く縁側へ歩き出した。美月は貴方の視線に気づくと、笑みを一瞬だけ浮かべ、無一郎を奥へと連れ去っていった。
不死川がイライラしながら酒を煽る。
「胸糞悪い女だ。気にするな」
そう吐き捨てながら、不死川はゆきの頭を撫でた。