第53章 十二月の夜〜冨岡義勇【微R】
義勇は、ゆきの顔を見た。
「義勇さん…違ったんです。昨日無一郎くんから話を聞きました。無一郎くんは、薬の事を知っていて薬を飲んでいなかったし凛を、抱いてもいませんでした…。」
義勇は、目を見開いた… 「な…に?」
「だから…私は勘違いして早とちりして…義勇さんにあんな事を…あの夜に」
時透は、薬の事を知っていて凛を泳がせていたのか?
飲んでいる振りをして…。
ものすごくゆきは、後悔しているように見える。
「あの夜?何のことだ。」
義勇が、ゆきを抱きしめる力を緩めた。
「私が義勇さんの…その…」
ゆきは、言いにくそうにしている…。
こちらを見ては、目を逸らす。
「何も無かった…あの夜は俺達は何も無かった…」
義勇さんが、悲しそうな顔でそう言ってくれた。
‐‐‐‐‐
あれから二週間が過ぎようとしていた。
義勇さんは、また私とあまり口をきいてくれなくなった。
そのかわりと言うのもおかしいが、隊士の三人がとてもゆきと仲良くしてくれた。
中村さん、上田さん、三田さんと言い
特に、三田さんはゆきに優しく頼れる存在になっていた。
ゆずと仲良くしていた隊士は、鬼殺隊を除隊して実家に帰って行った。
「三田さん!どうぞ手ぬぐいです」
「ありがとうゆき」
四人で、屋敷の周りを何周も走り終えたところだった。
「ゆきは、いつも三田に甘いよなー」
四人は、すっかり仲良くなっていた。
ゆきも、この三人の隊士と居る時は気が楽だった。
いつしか、毎日通っていた無一郎の屋敷にもあまり通わなくなっていた。
なぜならまだ凛は無一郎の屋敷に暮らしているし無一郎に後ろめたかったからだ
義勇とゆきは、今日夜の警備の日に当たっていた。
準備をして門に行くとすでに義勇は待っていた。
「遅くなりました。」
「行くぞ」
夜の街は賑わっていた。
今日は、都会の方への巡回だったので雪がちらつく街は素敵な雰囲気だった。
可愛い洋服に身を包んだ女性の姿も目に入った。
ゆきは、街の街灯に照らされてお店のガラスに映った自分を見た。
隊服に刀…。
「私も可愛いお洋服着てみたいな…」
隣でぼそっと言った言葉を義勇は聞き逃さなかった。