第3章 積極
『私がその友人の立場だったら
命懸けで仲間を守れた事を誇りに思います。
救った命を大切にして欲しい、
1分1秒でも長く生きて欲しい、
一体でも多くの鬼を倒し、自分の無念を果たして
幸せになって欲しい…。
貴方がこのまま死んでしまったら
ご友人のそんな気持ちを否定する事になる…
ご友人の死が無駄になる…
私は、そんな悲しい結末を迎えたくない…
迎えさせるわけにはいかないんです。』
…隊士の目を真っ直ぐ見つめながら
そう告げたさん。
彼女の言葉には重みがあって
慰めや同情の意図はなく、ただ自分の気持ちを素直に伝えている。
隊士もそれを理解できているようで…
さんの言葉が彼の心に響いたのか
隊士の瞳から、涙が静かに零れ落ちた。
『!?えっ、わーーーー!?!?
ご、ごめんなさいっ!!
泣かせるつもりはなくて…!!!
あの、本当に、偉そうな事言ってすみません…!!』
「…ふふっ」
さっきまですごく凛としたにも関わらず
隊士の涙を見た途端慌て出したさんは
何だかすごく可愛らしくて、私は無意識に笑ってしまった。
そして、そんな風に慌てたさんの側で涙を流している隊士は、彼女の胸倉から手を離し、涙ながらに語り始めた。
「すみませんっ…俺……
本当に自分が…不甲斐なくて、情けなくてッ…!
友達が目の前で死んで、悲しさのあまり
ヤケになって……自分が死ねば良かったとか…
そんな風に考えていたんです…っ…」
…まぁ、そうでしょうね。
そんな辛い出来事があったなら
ヤケを起こしても仕方のないこと。
私も…最愛の姉を鬼に殺された時は
しばらく取り乱していたから。
「貴方の言う通り…
俺は友達の気持ちを無駄にしたくないです…!!
だから…ちゃんと治療します…!!」
『本当ですか!?よかった〜!!
ありがとうございます!!』
「い、いや…そんな…お礼を言われる筋合いは…」
『いやいや、立ち直ってくれたようで
すごく嬉しいんです!!
生きる事を諦めないでくれてありがとうございます、
精一杯治療させてもらいますからね!』
そう言いながら微笑んださんを見て
隊士の人は顔を赤らめ、彼女に見惚れているようだった。