第3章 積極
「何なんだよアンタ!!!
さっきまで治療がどうとか言ってたくせに…!!」
『だって〜…、治療する気はないって
言ってたじゃないですか…。
食事も召し上がっていないようだし
これじゃあ作った料理も勿体無いから…』
「っ、いい加減にしろよ!?」
隊士の大きな声と共に、部屋の中からガタッと音が聞こえ、それに驚いたアオイが慌てて
部屋の扉を開けると、さんは
その隊士の手によって、胸倉を掴まれていた。
ア「ちょっと!?何してるんですか!?」
キ「て、手を離して下さい〜っ!」
2人はすごく焦っているようだけど
肝心のさんは、動じることはなく
彼女の胸倉を掴んだままでいる隊士を
ジッと見つめ続けていた。
『…あなたが言っていることは、矛盾してます。』
「は…?矛盾、だと?」
『治療をしないまま死にたいのなら…
なぜ昨日、目を覚ましてからすぐに
この屋敷を出て行かなかったのですか?』
「さっき言っただろ!!足が…」
『足が動かせないのなら、床に這いつくばって
手を使えばいいじゃないですか。
匍匐前進の要領で。』
「っ、そ…それは…」
『そうしなかったのは、貴方自身がまだ…
自分の命を捨て切れず、生きたいと思っているから…ですよね?』
…さんがそう告げると
隊士の人は驚きで顔を歪めています。
私はこの後、どういった展開になるのか興味が湧き、何も口を出さないまま、さんと隊士を見つめた。
「アンタに…、俺の何が分かるんだよ…
目の前で大事な友達が殺されて…!
鬼との戦いに出ていないアンタに
俺の気持ちが分かるとでも言うのか!?」
『いえ…。私には
貴方の気持ちは正直分からないです…。
でも…、亡くなったご友人の気持ちなら
何となく分かります。』
「…は?」
『あなたのその様子からすると…
亡くなった方は、あなたを鬼から庇い
助けた為に亡くなったんじゃないんですか?』
「っ、!?!?」
…どうやらさんの予想は図星だったようで、彼女の胸倉を掴んでいた手は、少し震え出していますね。