第13章 浮名
『……えへへ。』
…側から見れば変に思われるかもしれないけど
ニヤつく頬を抑えられない。
自分の額に何回手を添えたか分からない。
西口さん達に対しても
私のことを恋人だ、って宣言してくれて…凄く嬉しかった。
私は冨岡さんとのやりとりを
何度も思い出してはニヤついて…
その日から数日間
ずっと幸せな気分で仕事をこなしていった。
でも…、
幸せな日々は、すぐに一転する事もあるのだと、私はじきに思い知る…。
ーーー…数日後。
ア「さん、食事の用意出来たので
運ぶの手伝ってもらえませんか?」
『うん、今行くねー』
先日、負傷した隊士達が何人か蝶屋敷に運ばれて来て、私はその面倒を見るお手伝いをしていた。
彼らの怪我は、重症とまではいかないけど
骨折してる人達もいたから、早く完治するように手助けをしてあげたい。
そんな思いを抱えながら
隊士達が集まっている場所へ
アオイちゃんと一緒に食事をカートに乗せて運んだ。
『すみません、お待たせしました。
お食事持って来たのでどうぞ?』
「…あ、はい……、ありがとう、ございます…」
『…?いえ、お気になさらず。』
お盆を持って食事を机の上に置くと
何故かよそよそしい態度で礼を言ってきた1人の隊士。
まだ戦闘での疲れが残ってるのかな、って思ったけど、その隊士以外の人達も
私に対して、みんな同じような態度だった。
流石にあからさま過ぎで気になったから
食事を運び終わって炊事室に戻る際
アオイちゃんに尋ねてみる事にした。
『ねぇアオイちゃん、
さっきの人達の態度……何か変じゃなかった?』
ア「確かにそうでしたね…。
屋敷に運ばれてきたのは昨日でしたけど
その時は全員気を失ってましたから…」
…どうやらアオイちゃんも分からないみたいで
一緒になって考えてみたけど
本人達に聞く以外は確かめる方法は無いという結論に至った。