第13章 浮名
食事の後は
しのぶちゃんに調合してもらった薬を飲んでもらうために、私は病室を順番に回って行く。
早速、態度がおかしかった隊士達が休んでいる病室の前に来ると、中から彼等の会話が聞こえて来た。
「なぁ、あのって人…
本当に水柱の恋人なんだよな?」
「あぁ、そうらしいよ。
でもあの女の人が、強引に水柱に迫って
無理矢理恋人になったって聞いたけど。」
『!?!?』
なに、それ……
強引に迫ったってどういうこと……?
私…そんなことしたっけ…??
彼等が言っている事の意味が分からず戸惑っていると、彼等の会話はまだ続いていた。
「水柱も女見る目ねぇなー…。
あの人より蟲柱の胡蝶様の方が綺麗なのに。」
「だよなぁ。…それにあのって人、
男好きらしいから、飽きたらすぐに捨てるんだってよ。」
「うぇっ…、マジかよ、それ…」
「蝶屋敷で療養しに来た隊士達は
何人かあの女に目ェ付けられたらしいぞ?」
「あ、俺もそれ聞いた。
蝶屋敷に行くなら気をつけろって
他の奴に釘刺されたからな〜…」
「女って怖ぇよなー…。
ニコニコしてても
腹ん中じゃ何考えてんのかわかんねーし…」
「本当にそうだよなぁ…
俺、できるだけあの人とは関わらないようにする。」
「俺もそうしよ…!」
「俺も〜」
『……。』
……何で私は悪口を言われてるの?
彼等が話していたことは
全くの事実無根で、私には身に覚えがないことばかり。
私がいつ、隊士達に迫った…?
ただ治療の手伝いをしただけなのに…?
みんなが早く良くなるように
精一杯自分の出来ることをしてただけなのに…?
私はいつから……男好きって思われてたの…?
『…っ、』
薬を載せたお盆を持った手がカタカタと震え出して、病室の前で立ちすくんでいると
通路の先から私の方に向かって誰かが歩いて来た。