第8章 上官
side 冨岡
柱合会議の前に
竈門 炭治郎と妹の禰󠄀豆子の件で
いざこざはあったものの
大事にならず裁判は終了したが…
産屋敷邸に突然現れたに
俺は心底驚いた。
どうやら御館様は、彼女に一目置いているらしく、柱達にを紹介したかったようだ。
は緊張した顔付きだったが
不死川の怪我を見ると、慌てて奴に駆け寄り
治療させて欲しいと頼んでいたが
…当然、不死川は治療を拒否。
この男が大人しく治療を受けるはずがないだろうと思ったが、予想通り過ぎてため息が出そうになった。
しかしは
どれだけ奴に罵声を浴びせられても、治療をするのを諦めず、不死川を説得していて……、俺はその時、彼女から目が離せなかった。
は、人間の命の尊さを理解し、尊重し
血液がいかに大事なのかを語っていた。
その言葉には重みがあり
あの不死川を言い負かせ、腕の傷の治療を施していた。
恐らく柱の誰もが
不死川の治療など出来ない、と思っていただろう…。
結果は予想とは異なり
皆、の人柄の良さに気付き
少し変わった奴だが、鬼殺隊の隊士として認められた、と…その時の雰囲気で察することが出来た。
本当には不思議な女だ…
普通の女隊士なら
不死川の強面の顔を見ると、声を掛けることすらしない。
だがは
臆する様子など微塵も感じられず、度胸が据わっている…
それもまた、柱達を認めさせた理由の一つだろう。
は今後も
鬼殺隊の即戦力となることが期待出来そうだ。
…そして、柱達への顔見せが終了し
先に屋敷を出て行くを目で追っていると
俺の隣に座っている不死川も
彼女の背中を見つめているようだった。
…その時の不死川の目は
普段の鋭い目付きとは全く別物のように見え
俺はそんな不死川の様子を
黙ったまま無意識に観察していた。
「…おい冨岡、何見てンだよ?」
「…。いや、何も。」
俺を睨む不死川を見たら
いつも通り、威嚇しているような目…
先程の目つきは、きっと見間違いだな。