第15章 誘われた夜
「何かあったんだろ、何?」
「……ッッ…」
「言ってみなって」
「…カメラマンの…彩さんと会って…」
「ん、それで?」
「…アンリと喧嘩したって聞いて…」
「また来たか…別に喧嘩しちゃいねぇよ」
「またって…?」
「いんや、ほら、雅が帰るって言って俺が送るって話したときのあの後の話だ。」
咥えた煙草を半分ほど残っていたものの灰皿に押し付け、もみ消す加賀。するっと腕から離れ、ベッドに座ると『おいで…』と手招きをした。
「…お邪魔します…」
横に座る雅の腰をそっと抱いて話を続ける。
「…アンリにさ、なんでしっかり送らないんだって怒られてよ」
「…え?」
「ま、その後で、僕のって言ったからちょっとガラにもなくイラついただけだ…」
「…え、っと話が…よくわからない…」
「俺がしょうもねぇ位にガキだったって話だ。気にすんな」
そういうと腰から頭に手は移りポンっと撫でてくるその手は大きく、温かかった。
「もういっそ吐き出しちまえよ。あとは?」
「…彩さんに…その…」
「まだなんかあんのか?」
「…ッッ」
そういわれてもなかなか言い出せない雅。それを見て体の向きを変えれば加賀は再度問いかけた。
「…いいから、言ってみろって…」
「振り回すなって…それだけ…」
「振り回す…か」
「ん…だからなんでもない事だし…」
「振り回してくれて構わねぇけど?」
思ってもいなかった言葉が加賀の口から出てくる。くいっと体を押し戻せば極至近距離で加賀と視線が交じり合った。