第13章 彩の視線と牽制
♢ Side 加賀 ♢
ミーティング中にヴヴ…っとスマホが鳴る。
「…?」
ちらっと送り主を見れば雅の名前だった。ポップアップ表示で見えたメッセージは『会いたい…』のひと言。
「たく…」
ふっと口元が緩むのが自分でもわかった。そのことが悟られないように頬杖付くのも遅く、今日子さんから指摘が入ってくる。
「加賀君?!にやにやしてないで…真面目に聞いて?」
「へーい…」
横に座る新条には『…ばーか…』と珍しい突込みも来るほどだ。だって仕方ねぇだろ…彼女に会いたいなんて言われたら…
……・・彼女…か
するっと心に出た言葉に自分でも驚いた。
未だ付き合おうと決めて数日なのに、こうも気になるなんてな。それとも今までもずっと気にしてたんじゃねぇかなんて錯覚すら覚える。…笑えて来るぜ…本当に…
ミーティングの内容はいつもとほぼ変わらない。というか結論は俺や新条には好きに走れで終わる。基本はメカニックとのすり合わせ。俺らに聞く事とすれば…
「それで?加賀君はどう?」
「…右に旋回する時サスが浮く。それ以外は特に」
「OK…」
グレイが武骨な返事を返してくる。何が、どう…なんてそんなのは一切聞いてこねぇ。ま、グレイとフィルが居んなら問題はねぇが、それよりも……
「あぁあ…」
グレイがじっと俺を見てやがる。ありゃ『なんでもっと早くに言わねぇんだ』っていう目だな
サスが浮こうとなんだろうと俺にとっては許容範囲内だ。だけど…あれから一切入ってこない雅からのメッセージは許容を超えてる気がして…
とか言っても恐らくミーティングだってのは察してんだろうけど。
「…ハァ…」
吐いたため息がたった一つ、その理由なんざ誰にも解らない様にふわりと消えていった。
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