第13章 彩の視線と牽制
「加賀さんの事って…それならご本人に聞いた方が…」
「いえ、そうじゃなくて…私加賀さんの事がずっと好きで…加賀さんを追うためにカメラマンになって…サイバーの専属になって本当に嬉しくて…」
「あ、そうなんですね…」
「それで昨日も倒れそうになったってスゴウの方で声がしたと思ったらずっと心ここにあらず的になって…あなたの姿が見えなくなって、そしたらアンリ君と喧嘩始まって…だから何か関係してるのかなって思って…」
「あ、本当は昨日ホテル、ここに送ってくれるって言ってくれたんです。でも私が断って…って、アンリと喧嘩?」
「はい!」
ふふっと笑いながら彩は話をつづけた。
「なんだか穏やかじゃなくて…他のチームの方も出てきちゃったりで…」
「すみません…そのことに関しては…アンリからもオーナーからも聞かされてなくて…」
「あ、熱出されて戻られたんですよね」
「はい…」
口元や表情にも余裕たっぷりと言わんばかりの彩。そんな彩はさらに追い打ちをかけると言わんばかりに話を続けていく。
「…本題なんですけど…・・加賀さんの事、振り回すだけならやめてもらえませんか?
「え?」
「熱出して、無理されたらクルーだって困るでしょう?それに他のチームの事も、しかもグランプリがかかっているようなドライバーを巻き込んで…ガレージがよく隣になるのは解りますけど…」
そう話している二人の元に一人の女性が入ってくる。
「そのくらいにしてくれない?」
「…え?」
「ミキ…さん…?」
「元同じチームメンバーからしても、雅の友達としても、これ以上無理させるのもこれ以上あんたの余計な話に付き合わせるのも見過ごせないよ」
「…ッッ」
すっと手を引いてミキは雅をその場から連れ出した。