第13章 彩の視線と牽制
翌日、だいぶ下がったとはいえ、予選のピットインはOKが出なかった雅。予選の結果は一部変更があったものの、加賀のトップは変わらずだった。
「…アンリは…6位、一つ上がったんだ」
ホッとしたのもあった。ゆっくりと体を起こして着替え、部屋を後にする。ホテルから出てすぐ横にあるコンビニに向かっていく雅だったものの、そこで彩に会った。
「…あれ…」
不意にトンと肩と叩かれた雅。振り返ると嬉しそうに笑う彩がいた。
「…こんにちわ!」
「こんにちわ、えっと…」
「彩です。彩・スタンフォード、カメラマンをしてます!」
「あ、知ってます。今日は…速いんですね」
「はい!加賀さんも早くに出てタイムアタック終えてましたし!それに昨日写真撮れなかった方達への撮影がメインだったので…」
「そうですか…」
なぜか彩の口から『加賀』と出ると胸がツキンと痛んだ。
『大丈夫だ。カメラマンとしてしか見てねぇ』
そう言っていた加賀の言葉がゆっくりと雅の心の焦りを取り戻していく。
「…でも、聞きたいことがあって…」
「え、私。ですか?」
「そうなの。お時間良いですか?」
にこりと笑う彩。買い物だけして時間を取ることにした雅。
「すみません、お待たせしちゃって…」
「大丈夫です!どこに行きます?」
「いえ、私少しホテルに戻らないといけないので…そこのカフェテリアでもいいですか?」
「あ、はい」
彩を連れてロビー横にあるカフェテリアに入っていく雅。
「あの、それで…お話って…」
「実はね、加賀さんの事なんです」
ドクン…っと胸が響く…