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Winner【サイバーフォーミュラ・加賀】

第12章 甘く苦い距離


「あきれたよね…体調管理もできないなんて…」

そう思いながらもスマホを伏せた直後だった。

コンコン…

「はい?」

ゆっくりと体を起こしてドアに向かい、開けた途端にするりと加賀が体を入れてきた。

「…か、がさん?」
「悪いな。急に…」
「いえ…でも…」
「少しだけ話したくてな」
「話…ッッ」

カチャン…っと小さな音で扉がしまる。その瞬間にくるりと向きをかえさせてベッドに向かわせる。

「…あの、」
「いいから寝てろ」
「でも…話って…」

加賀に言われるままに雅はベッドに座り、中に入る形になったものの、すぐベッドの淵に座った加賀。
ゆっくりと顔が近付いてきたことに少しドキリとしたせいか、きゅっと目を閉じた雅の額にコツ…っと加賀のそれも重なった。

「やっぱり…何度あんだよ…」
「え…っと…ピットで測ったら38℃…」
「ハァ…あのさ?」
「ん…」

ため息と一緒に加賀はさらっと頭を撫でた。

「頼むから…無理はするんじゃねぇよ」
「無理って…」
「体調悪いなら悪いって言え。それすら聞いてくれねぇオーナーさんじゃねぇだろ」
「そりゃそうだけど…」
「何?理由でもあんの?」
「理由…」

そう呟くと雅はそっと加賀の顔を見つめた。

「会いたかった…」
「……」
「ほんのちょっとでもよかったから…加賀さんに…」
「たく…いつでも会えんだろうが…」

そういうとそっと手を重ねた加賀。ゆっくりと引き寄せれば優しく雅の背中を抱く。

「…熱以外はなさそうだな」
「ん、咳とかそういうのは…ない」
「そか…」
「ありがと…」
「あぁ、横になってろ」
「ん…あ、そうだ…」
「何?」
「ポール、おめでと…」
「まだ明日もあんだろ」
「そうだけど…」

ふにゃっと頼りなさげに笑う雅の額に手を乗せて笑いかけた。
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