第11章 アイ・コンタクト
「最近はどうかしら?」
「…あの、私…クレアさんにお話しがあって…」
「ん、修さんから聞いた。そのことでね?」
そう話しながらも窓際に移るクレア。着いて行く様に歩を進め、少ししてぴたりと止まる。
「私はいいと思うわよ?」
「え?」
「あら、反対されるとか思ったのかしら?」
「は、い…」
「そんな事はないわよ。ハヤト君の時にもお世話になって…加賀君の事はよく知ってるわ?反対する理由がない。」
「クレアさん?」
『それに…』とクレアは続けて話し出す。
「…加賀さんの事、好きだっていうのはずっと前からでしょう?だからいつかはこうなるのかなぁなんて思ったりもしてたし。」
「…すみません…」
「あら?謝ることがあって?」
「いえ、そんな事はないんですが…」
休憩の時のアンリの反応が頭をかすめていく。
「何か気になることがあるのかしら?」
「さっきの休憩の時に…」
「あぁ、アンリに話したのね?」
「はい…」
「それであんな風に驚かれたって、いう所かしら?」
「はい、アンリも背中を押してくれてたし…伝えないと、いきなりやめますって直近になって言うのもと思ったので…」
「やめるかどうかはまだわからないんでしょう?」
「…恐らく今季のレースで終わらせていただくことになるのかなって…」
そう話す雅。その言葉をしっかりと聞き入れているクレアはふふっと笑うだけだった。
「…そんなに好きなのね…」
「はい…ただ、こればっかりは加賀さんの事もあるので…来るなって言われたら…まだまだアンリの所に居させてもらうことになるのかもしれないけれど…」
そう笑う雅の表情は少しばかり寂しげだったもののクレアは『大丈夫よ、きっと』と返事をするのだった。