第11章 アイ・コンタクト
雅がそういうのも仕方なかった。修が言うわけでも何だろうし…かといってどこかで聞かれていた?というのも考えにくい。そんな中でなぜミキが知っていたのだろう…そう思っていた時だ。
「…さっき、加賀から聞いた」
「え?」
「ていうか、私に直接じゃないんだけど…」
「どういう…」
「新条の方にさ?『付き合う事になった』ってひと言あって、新条パニ食っちゃったんだけどさ!」
「そういう事か…」
「で、雅に聞こうと思ったんだけど、なかなか来なくて、って思ってたけど、そっか、オーナーにか…」
「ごめんね?遅くなって…」
「大丈夫だよ!でもよかったね!」
そう言ってミキもあすかも雅が加賀と付き合う事は喜んでくれたのだった。
***
その頃…加賀は部屋で煙草をふかしていた。
「…スゥゥーー…にしても…」
ふと窓から外を見上げていた。
「…俺が誰かとこういう関係になるとは、ね」
そう呟いていた。サイバーでグランプリを獲得したらインディーズに戻る…そう決めていたはずだった。その為には恋人はいらない…そう思っていたはず…それでも、それをはじめから知っている今日子なら…とも考えたこともあったが、それでも恋人には至らずにすんでいた。特別な感情というのが生まれなかったのだった。
「…今日子さんでも思わなかったのによ…」
しかも愛想もいい、気づきもしてくれて、相手の事を考えてくれる。それでいて甘えるのがへたくそで、泣き虫で…
そんな女がだなんて俺もどうかしてるだろう…
そんな風に頭で考えていた。それでもすり寄ってきたあの感覚が、好きだと諦められないと言ってきた声が加賀の中でこだまするように離れなかった。