第10章 さらけ出された感情
「別に俺は、雅ちゃんの事嫌いじゃねぇよ」
「…ぇ?」
間の抜けたような、からからに乾いていた喉から不意に出たひと言は思いの外掠れていた。
「…だって…この間…ッッ」
「あれは俺の勝手すぎる理由だ」
「…でも…このまま優しすぎると…忘れられなくなるんです…距離感もわからなくなるの…変に期待して…もっと…ちゃんと加賀さんの事を知りたくなって…でも…深入りしたらダメだって…でも…もう無理だから…」
「ならそれでもいいんじゃねぇの?」
あふれ出す加賀への気持ちがとめどなく零れだす雅の心を加賀はふわりと包み込む様に否定をしなかった。
「でも…俺が、他の男にしろといったのは、…絶対別れが来るからだ」
「え…それって…どういう…」
「このグランプリ、俺は優勝する…んで、それが叶ったらグレイとフィルと一緒にアメリカに移るつもりだ。」
「…ア、メリカ…?」
「だからもし縁があって、続いたとしても俺はスゴウをやめろとも言えないし、着いて来いとも来るなとも言えねぇだろ…期限付きの付き合いだなんて俺には性に合わねぇし、それを無理強いするのも違うだろうが…それに最悪はこのグランプリ中に死んだりするかもしれねぇ、死と隣り合わせのマシンなんだよ。」
「…加賀さん…」
「そうなって、別れるのが解ってて正直に心の内、見せあえるかって言ったらどこかで線引きしちまうだろ。それじゃ付き合ってる意味なんてねぇって思う事も出てくる。そういうズレがあって…はじめからわかってて…時期が来たら身勝手に捨てる男なんかやめちまえって言ってんだ。」
「…な、んだ…」
「ん?」
ふっと方の力が抜けた雅。目からはポロポロと涙があふれ出してきた。