第9章 苦しくなる心とぶつかる本音
どれくらい走っただろうか…気付けば少し開けた広場に来ていた。バイクを止め、手で押しながらも加賀は入っていく。
「…怖くなかったか?」
「大丈夫…です」
「そか、それならよかった…」
そう短く会話を済ませると、ベンチに座る。
「隣、座れよ…」
そう促されて雅はメットを抱えたままに加賀の横に腰を下ろした。
「…加賀さん…」
「ん?」
「もう、バイクとか…乗っても大丈夫なんですか?」
「まぁな。言ってもバイクだとサイバーよりもGは格段に軽いし。」
「そうかもしれないんだけど…」
会話は出来るものの、一度は振られている、それに…そんな気持ちが雅の言葉を詰まらせる。
「…この間、情けないとこ見せちゃって…忘れてください」
「この間…、あぁ、ガレージでのか…」
「はい…」
「まぁ、俺に取っちゃ関係ないんだけど…」
ズキッと胸が軋んだ。『関係ない…』そうはっきりと加賀の口から出てきたその言葉に、雅はどうしようもなく気持ちが揺らいでいく感覚になっていた。
「…関係…ないのかもしれないですけど…」
「ん…」
今にもここから逃げ出したい。でもバイクでつれてこられた以上、ここから逃げても全くわからないこの場所からどうやってホテルに帰れるだろうか…恐らく道に迷って心配をかけるだけ…
「…あのさ、雅ちゃん」
「…はい…」
「ありがとうな」
「え?」
「今日子さんから聞いた。」
他の人の名前を加賀の声で紡がれる、ただそれだけのことなのに距離が遠く感じてしまっていた。
「あの時、スゴウのガレージにいたのも偶然だったって言ってくれたってな。」
「そんな事は…」
「まぁ、ガレージがAOIと隣り合ってなけりゃ俺も気づかなかっただろうけど…」
そういえば空を見上げる様に加賀は…を仰いだ。