第9章 苦しくなる心とぶつかる本音
「それと…」
雅の言葉よりも加賀が続けて言葉を紡いでいく。
「…新条とミキちゃんに、怒られたわ」
「え?ミキさん…に?」
「まぁ、怒られたっていうか、なんていうのかな…」
そういえばフッと笑いながらも加賀は続ける。
「なんで泣かしてるんだってな」
「…ッッ…それは…私が悪いんであって…」
「悪い事はねぇだろ。あの時は、俺の言い方が悪かった。
「そんな…私が勝手に泣いちゃっただけで…それにそういう感情も加賀さんは抱いてないの解ってたんです。だから別に…」
「でも、嬉しかった。」
そういわれた言葉で雅の心は少しだけふわっと温かくなる。
「…あの…ミキさんと新条さんになんていわれたのかはわかりませんけど…無理っていうか…うん、無理…しないでください。」
「雅ちゃん?」
「あの時、好きだって言っちゃったのは…勢いだったっていうか…いうつもりなかったっていうか…」
「そっか、」
ふっと口元が緩む様に笑った加賀。それでもその表情は雅は見ることがなかった。見ようとしなかったのではなかったものの、顔を上げる事ができなかったのだ。
「悪かったな、こんな時間に呼び出しちまってよ…」
「いえ…私の方こそ…なんだかすみません…」
「いんや……・・そろそろ帰るか…」
短い時間を巻き戻すかの様に、加賀はよっと立ち上がり、バイクの横に立った。
ゆっくりと歩き出し、車道近くに出ればエンジンをかけ、メットを被る。
「…ほら、乗れよ」
そう促して雅を乗せれば来た道を戻るかの様にバイクを走らせていった。行きの道よりも幾分早くも感じた雅だったものの、ホテルに送ってもらった後の別れ際はあっさりとしていた。