第9章 苦しくなる心とぶつかる本音
『今いい?』
短すぎるメール。そのたった四文字にですら雅の心は跳ね上がってしまう。
「…コレ…大丈夫って答えたら…どうなんだろ…」
そう呟くものの、送るのに戸惑いすら感じていた。入れてしまえば楽なのに…そう思いながらも、入れては消して…そんなことを繰り返してしまっている。
「…どうしよう…」
入れれば恐らく会話は続く。話が、用事があるから入れてくる…何も用事がないのに『今いい?』なんて聞くことはないのも解っている。
「たった一言なんだけど…」
それでも指が震えてしまう。そんなことを思いながらも迷っていた。何度入れかけた文字を消したころだろうか…
♪♪~♪~♪
「え、待って…!何…?」
そう、迷っているのにしびれを切らしたのだろう。着信が鳴り響く。
「…も、しもし…」
恥ずかしい位の声色、雅の声は確かに震えていた。
『…ごめんな、忙しかったか?』
「いえ、そんな事は…」
忙しいと言えばよかった。データの処理をしていると…そうすればよかったのになぜか真逆の答えが雅の口を突いて出る。
『ならよかった。出てこれるか?』
「え…?」
『話がある』
聞き間違いかと雅はどれほど思ったかわからなかった。それでもそう思いたくない程に電話越しの加賀の声に素直に返事をしていた。
「…あの…出るって…」
『ホテル、コン・フォレストだろ?』
「なんで…」
『この周辺で俺たちのホテル以外だとそこだろうかなって?』
「…はい、ッッ」
『迎えに行く。』
そうして十分くらいでそっちに付くように行くからと言われ、通話は切れた。