第8章 会いたい気持ち
シャンパンも終わり、写真撮影やインタビューへと移っていく。それを見ながらも嬉しそうに笑っていた雅。
しかし、どこか遠い目をしていることに気付くものは誰もいなかった。
ホテルに戻り、いろいろと話をしながら夕食へと向かっていく。
「おめでとう!」
「ありがとう、」
勝者二人をもてなす食事会となった。
「…それにしても今回のレースはどうなるかと思ったけど…」
「ほんとそれなぁ…」
「ほら、裏切りとかもあったし…」
「そうそう、もうどうなるかと思ったよ」
口々に聞こえてくるのは追放にも近い状態でクビになったクルーの事。それでもそれをほっとかないのが修だった。
「…理由はどうであれ、もうそれは済んだことだ。口外はもちろん、もう忘れてほしい」
「あ、はい、すみません…」
そうして進んでいく食事会。そのまま何事もなく、和やかな空気の中で幕も下りた。
「…これで明日から二日間オフか…」
そんな風に思っていた雅。しかしデータのまとめ等多少の仕事は残っている。
「ホテル帰って、少しやっちゃお…」
そう思いながらも少し早くにホテルに戻っていく。この日はあすかもハヤトの部屋に行くから!と連絡があり部屋は独り占め状態。
「…あぁあ…あすかちゃんは今日は個別で祝杯か…」
ぽつりとつぶやく声はノートパソコンを打つ音でかき消されるほどのものだった。
「…ハァ…」
それにしても大きすぎるため息…そう思った瞬間に自分自身でも笑ってしまうほどだった。
そんな時だ。
ヴヴ…
雅のスマホが一瞬震えた。
「え…なん、で…」
そのメールの差出人は、他の誰でもない…
加賀だった。