第2章 思い出す記憶
翌朝…ミキの最後と言う事もあり、気合が入っていた。雅もまた念入りにアンリのマシンを拭いている。
「…これでどうかな…」
「雅さん」
「…あ、クレアさん…」
早朝にも関わらず、クレアはガレージにやってきた。
「…今日でミキさん…菅生最後なんですよね…」
「えぇ、そうね」
「昨日…ミキさんに聞いて…」
「そうだったの…」
「はい…」
「ガーランドはどうかしら?」
「私はマシンの事はよくわからなくて…でもうきうきしてるような…そんな感じかなって思います。」
「あら、ならアンリも楽しみにしてるかしらね」
「そうだと思います。5番手スタートになってますけど…」
「そうね、ハヤト君は相変わらずPPだけど。」
「さすがって感じですね…」
「それに加賀さんも」
不意にクレアの口をついて出てきた名前に雅はドキリとしつつも手が一瞬止まったものの、すぐに動き出す。
「…クスクス…いいのよ、雅さん」
「…いいっていうのは…その…」
「好き、なんでしょう?」
「そ、れは…」
「気付いてないって思った?」
ふわりと笑うクレアはすべてを見通しているような雰囲気だった。
「…あの、この事…他のスタッフは…」
「多分知らないんじゃないかしら?私だって恐らくそうじゃないかなって思うくらいだし。あ、あとは修さん?」
「……オーナー…まで…」
「ミキさんは完全に知ってるでしょう?」
「……ほとんどですよね…」
「でもアンリは知らない」
「知られたくないです…」
「あらまぁ」
「あらまぁって…だって…」
「あなた、アンリのお気に入りですもんね!」
どことなく嬉しそうにクレアは続けた。