第7章 狂いだす居場所
♢ Side 加賀 ♢
雅ちゃんが病室に来てくれて、正直びっくりした。にしても、あれだけ口止めしておいたのに…
だけど…なんで俺も口止めしたんだろうか…口止めしてもニュースになったら、チーム内で話になれば遅かれ早かれ解る事なんだけどさ…
でもあれは想定外で。そう…
『好きなんです…』
ずっと頭に残ってる。女はいらないって思っていた。というか…今日子さん位だと思ってた。俺にずっと構ってくるのは…
だけど…
いつからなんだろうなって…考えてもわからねぇし。よそよそしいのもあれで納得した。
ーーー・・…
「何があって泣かせたんだ?」
「別に…俺が泣かせた…んだろうけど」
「二人でいて、病室から出てきた真坂さんが泣いてたんだから加賀だろ…」
「いや、それが…来て早々泣かれてよ」
「それは無事だったからだろうけど…」
「まぁ、あとは…なんだ…」
「ん?」
「ま、大したことじゃないな…」
……・・・・・ーーーーー
大したことない…か。どの口が言ってんだ…大したことだろう…女が、誰かに思いを伝えるって…でも…あの時俺はあぁ言うしかなくて。
『俺よりいい男は居るだろうし』
俺は恋愛には向いてねぇし、それこそ走ることしかない。グレイと一緒にいずれはアメリカに移住するかもしれない。そうなったら…少なからず別れが来る。一年以内に…
もしかしたらそれこそレース中のクラッシュがあれば死と隣り合わせだ。そんな中で…しかもチーム違いで…どうやって傍にいてやれることができる…?それすらもわからないのに…俺の気持ちもしっかりと分かってねぇ中で…あれ以外の答えがどうやっていえるってんだ…
なのに…どうしたら正解だったかなんてのすらもわからねぇのに…
「ハァ…俺の問題だよな…全部…」
そう呟いた声はあまりにも小さくて…それに誰かに伝えることも無いままに…
ザっ…と一瞬吹いた強い風にかき消されたんだ…
・