第7章 狂いだす居場所
そしてテストランも終わり、休暇と体調つくり、ミーティングの日々が続いていく。
「…アンリ?」
ふとある日の夕暮れに雅はアンリを呼び止めた。
「何?」
「あのね?最近調子はどう?」
「あんたも知ってるだろ?そんなのさ。」
「そうなんだけどさ?」
「…もしかして僕の良くない噂、聞いたってワケ?」
「……それは…」
「気にしてないよ。そんなの。」
「…アンリ…」
そう呟きながらもフッと笑い、アンリはマシンに寄りかかりながらも話を始めた。
「…はじめはそりゃ風見先輩の事憎かったよ。あの人がいるせいで父親からはダメな奴の烙印押されて…でも…今はそんな事も無いから。大丈夫。」
「アンリ…」
「心配しないでいいから」
そう言ってふわりと柔らかく笑いかけたアンリを見て雅は少しだけほっと心をなでおろした。
***
しかし、『その時』は時期に訪れた。
ある日の夜、仕事の整理のためにガレージに残っていた雅。気付けばうたたねしてしまっていた。
「…ダメだな…気が…抜けてた…」
そう小さくぽつりとつぶやき、夜風にあたろうと外に出た。
「あれ?」
不自然に光る明かりが1つ、ゆらゆらと見えた。
「…待って…、あれって…」
そのガレージは間違いなくスゴウグランプリ…そう、アンリのマシンの所…
しっかりと占められているはずのガレージが半分ほど開いて、加えて不自然なその明かりに雅はゆっくりと近づいていく。
「…(誰…だろ…)」
マシンに近づいてゆらゆらと光は消えることがない。
「…ッッ」
カチャン…雅の足元で小さく音がした。
「…ッ?!」
「誰だ!!」
光が雅に一瞬にして向かってくる。くっと目を閉じたものの、時期にその光は近づいて来る。
「…何…してたんですか?」
「黙っててくれないか…」
「それは…」
「黙ってればそれでいいんだよ!」
そう言い放ってグイっと肩を掴まれる。それはメカニックの一人だった。