第6章 心を、止めて
そしてその日…雅は夕食も摂ることなく部屋にいる。しかしミーティングとなれば話は別だ。
「…真坂、今いいか?」
「あ、オーナー…先ほどはすみませんでした。」
「いや、それよりも夕食も摂らないで…何かあったのか?」
「いえ、何も…食欲がないだけで…」
「そうか、なにか食べれるならその時々で食べればいい。わかったな?」
「はい」
そうしてミーティング。車田と修が一緒になってクルーの前に立ち、話を始める。
「…ーーそれじゃ、あとのことは修君から」
そうして引継ぎ、修が立ち上がり話を始める。
「一部報道にもあるが、今回はAOIZIPのブリード加賀がテストラン中に負傷し、不参加となる。その為、今回はポイントを引き離す為にもアンリにはハヤトのサポートに回ってもらう。」
「…どうしてですか!」
「それがスゴウとしての得となる。」
「でも…それじゃぁ僕がもうすでにグランプリを取れないと言われているみたいで…」
「そんな事は言っていない。一番望ましいのは1位にハヤト、2位にアンリ。そしてランドルが5位以下が望ましい。」
「……ッッ」
「今回加賀が不参加と言う事になればポイントは当然0。そこにハヤトが10ポイント加算し、アンリも8ポイント獲得すればまだまだ射程内には収まる。」
「……修さん」
「なんだ、ハヤト」
「アンリにはアンリの走りをしてもらえばいいですよ。俺のサポートというより。」
「…」
「加賀さんがいないなら…ランドル達には申し訳ないけど負ける気がしないんです。俺は俺の走りをする…。だからアンリにもいつも通りに走ってもらいたいんです。無理やりフォローに回ったら最悪クラッシュになる…」
そう話すハヤトに小さくため息を吐き、修は車田に相談をする。
「どうしますか親父さん…」
「そうだなぁ…ハヤトがそれでいいというなら問題ないが…」
「アンリ…」
「…はい」
「これならいいか?」
「…わかりました」
そうしてアンリもようやく首を縦に振った。