第5章 事故、そして…
ホテル前でタクシーに乗りこみ、はやる気持ちを抑えたままに早くと願っていた。
「…(無事で…いて…)」
そう思いながらも二十分ほどかかって病院に着く。受付で病室を聞き、向かっていった。
「…でも…」
扉の前でノックする手が止まる。
そうだ…彼女でもないのに…?
チームメイトでも…ないのに…・・
ただの『知り合い』程度が…来ていいの?
様々な感情が心をひしめき合わせる。そんな時だ。
「…あら、スゴウの…」
そんな声に振り向けばそこには今日子が来て居た。
「…あ、すみません…勝手に押しかけちゃって…」
「加賀君ならいるわよ?」
「…はい…」
「……入らないの?」
「勝手に来てしまったから…やっぱり帰ります」
「あら、せっかくなんですもの、会っていけばいいじゃない?」
そうにこりと返した今日子。俯きながらメンバーでもないのに…とこぼす声を拾い上げる。
「…でも、心配なんでしょう?」
「…はい…」
「私が状況を伝えてもいいんですけど。直接会った方が解ることもあるわ?」
にこりとした顔はそのままにくるりと背中を向けた今日子。
「あの、」
「私少し用事を思い出したから。あとで来るわ?ごゆっくり」
そう言い残してその場から離れていく今日子。こくっとカラカラになるくらいの喉を緊張から溜まる唾液を飲み込む。
「…ッッ」
意を決したかの様に小さく扉をノックする。
『はい?』
中から少しだけかすれたような声が聞こえてくる。カララ…っと軽すぎる位の扉を開け、中を見ればベッドから身を起こしている加賀がいた。
「…あれ…雅ちゃん?」
「あの、来てしまってすみません…」
「いんや?……もしかしてミキちゃんから聞いた?」
小さく笑いながらも目を細めて効いて来る加賀。手首こそ包帯を巻いていてもそれほど大けがと言う事ではないように見えた。