第38章 王者の来訪
「おかえりなさい」
「あぁ、ただいま」
メットを預かれば雅はするっと加賀の後ろに回り、記者たちの邪魔にならぬように後方に移動していく。
「…あ、しまった…」
「どうかした?」
そう答えるフィルだったものの、すぐにその雅の言葉の意味が分かった。ハヤトとアンリも同時に囲まれていたのだ。
『サイバー界のトップ2がそろった!?』
『それに!え、もう一人…?!』
疲れた表情など一切見せる事も無いままに加賀はインタビューに答えていく。ハヤトやアンリも戸惑いつつも『見に来たんだ』と伝えていた。そんな時だ。
「…おい!!!!」
怒号と同時に隣のガレージからロベルトが入ってくる。後ろにはメカニックを引き連れていた。
「…あれって…」
「お隣さんだな」
「…どうしたんだろ…」
しかしどかどかとやってくるのは加賀のマシンの脇に居たメカニックの元だった。
「…お前ら違法使ってんじゃねぇのか?」
「違法…?」
「何言ってんだ?」
「だってそうだろうが!こっちがどれだけ苦労して前年もチャンプを取ったと思ってる!それなのに…ぽっと出のお前らが簡単に取れる物でもねぇんだよ!」
「あ、やっかみってやつ?」
「ぁあ?!もう一回言ってみろ!女の分際でレースに首突っ込んでんじゃねぇ!」
「あ…」
そう周りが呟き、はぁ…っと小さくため息を吐いた時だった。雅がひるむどころかキッと見上げて話を始めた。