第38章 王者の来訪
こうしてマシンに乗り込む加賀の周りからハヤトも退き、グレイやフィル、リックのみとなる。
「…雅?」
「ん?何?」
「……」
「城?」
「クス…いや、なんでもねぇ。待ってろな?」
「いつまでも待ってる」
「そんなに待たせねぇよ」
「いちゃつかねぇでほしいけど?」
「リ…ック…?!」
そうこうしていれば隣のガレージのマシンも戻ってくる。
「…んじゃ、行って来る」
メットを受け取ってエンジンをかける。
「…行ってらっしゃい」
一歩、二歩と下がればうなりをあげて加賀の乗り込んだマシンもガレージを出ていった。
「…始まったな」
「…そう、ですね」
ハヤトとアンリも見つめる中、ゆったりと走る加賀。しかしそのマシンのスピードが変わったのは最終コーナーを立ち上がった時だった。
「…ッッ」
ハヤトもアンリも言葉が出なかった。モニターで見ていたスピードとは明らかに変わっていたからだ。
加えてアンリは雅の方をちらちらと気にしていた。
「…何も…言わないんだ…」
「何か言ったか?アンリ」
「…いえ…」
じっと見ながらもパソコンに何やら打ち込んでいく雅を見てアンリはどことなく寂しそうな顔をしていることにフィルが一人気付いていた。
「…ハァ…加賀も大変だな…」
「ん?何か言ったか?」
「別に?独り言」
そうグレイからの問いかけに答えたフィルだった。予選の結果は当然と言わんばかりに加賀が先頭を奪取した。
「…よし…」
嬉しそうにガッツポーズをとるグレイ達メカニック。それから加賀が戻ってくるのを待って記者たちが集まってくる。