第38章 王者の来訪
「…もぉ…」
小さく呟きながらもその表情は照れて隠し切れない様子だった。
「あ、そうだ」
「え?」
「俺ちょっと出てくるわ」
「はい?!」
雅だけではない。グレイやフィル、そしてリックまでもが声がきれいにそろった。
「…どこ行くんだよ!」
「そりゃ、迎えに?」
「迎えにって…」
「どこに?!」
「誰を!」
「そう一気に聞かなくても答えるって。」
「だから…!」
「ハヤトだ」
「……へ?」
「またチャンプがどうして?」
「見てみたいんだってよ」
そういえばひらひらと手を振ってガレージを出ていった。しかしもうすでに予選も始まっている。小さく、そして離れたところでは大きくもため息を吐かれていた。しかし言い出したら聞かないのは誰もが周知していることだった。
「雅?知ってたか?」
「初耳…」
「は?雅もか?」
そう。恐らく誰よりも驚いていたのは雅だったのだろう。そして加賀がガレージを出て行って時期に二人連れて戻ってきた。
「悪いな」
「悪いって思ってねぇくせに」
「そういうなって」
「君がチャンプか」
「いえ、昨年は加賀さんがチャンピオンだったので…風見ハヤトです」
「…あ、れ?」
「僕は来たくて来たわけじゃないから」
そう言い放つのはハヤトの半歩後ろにいたアンリだった。
「…相変わらずだな。お前は」
「あんたに相変わらずなんていわれる筋合いはないんだけど?」
「あいつ、何者だ?」
そうリックは雅に聞いた。
「アンリ?来て?」
そう呼ばれて雅の元に向うアンリ。
「…リック?こちらアンリ・クレイトー。アンリ?リックだよ」
「さらっとしすぎじゃん」
「そういうなよ。…って事は君、13回のチャンプか」
「悪かったよ、たった1回でさ」
「1回でもすごい事だろ!」
そう話していた。