第37章 決勝の行方
『行くか』と言われて雅は加賀と一緒にガレージを後にしていった。
「…ハァ…アンリも表彰台に登れた…」
「…つぅかあいつだって、前にはチャンピオンになってる器だ。計算されていたとしてもな?」
「それもそうだね」
「あの時のがよっぽど貪欲だったんだろ。」
「…そうなのかな…」
そう話しながらも雅は加賀の左腕にきゅっと巻き付いた。
「…ちょ、歩きにくい…」
「いいの」
「俺嫉妬してんですけど?」
「へ?なんで?」
「俺の時あんなに指示飛ばさねぇじゃねぇか」
「言わなくても城は、普通に自己完結するじゃない」
「にしてもだ!」
腕を離し、肩を抱きよせて加賀は話し出す。
「…あの、出発前の…あぁ言うのとか俺にねぇじゃねぇか…」
「出発前って…」
「…」
「もしかして…goodluckっていうの?」
「…あぁ」
「…クスクス…」
「笑い事じゃねぇよ。」
「そうかもしれないんだけど…でもマシンに乗る前のキスと同じだと思ってた…」
「…ハァ…」
「…それに、アンリのあれはずっとっていうか…」
するっと肩を抱く腕から抜け出ればたたっと加賀の前に進み出た雅。
「…それに…城は必ず戻ってきてくれるから…」
「そうもいかねぇ時だってあるだろ」
「そうかもしれないんだけど…でも…」
そういうと雅は俯きながら加賀の手をきゅっと握りしめた。
「城に…幸運をっていうのもなんか違うと思って…」
「…なんで?」
「だって…私が城にとってのラッキーでいたいから…」
「…クス…そういう事…」
一瞬歩みを止めた二人、その直後にふわりと重なるだけのキスが雅の唇に降ってきた。
「…とっくに勝利の女神だ。だからんな事気にすんな」
「気にしてたのは城でしょ?」
「……だったな。」
そう言い残せば再度並んで歩き出すのだった。