第4章 2人きりの時間
雅は修を探し、声をかける。
「オーナー、すみません…先に失礼させていただいてもいいでしょうか?」
「体調悪いか?」
「いえ、そうじゃなくて…」
「…ん、解った。送りは…『あ、大丈夫です…一人で帰れます…』…・・そうか…」
そうして先に会場を後にする雅。玄関から少しある石畳みの玄関アプローチを歩いていると向かいから人影が近づいて来る。
「…え、」
「あ、雅ちゃん。もう帰るの?」
「加賀さん…」
「ん?体調悪い?」
「いえ…そうではないんですけど…」
うつ向いたまま少しだけの会話。
「…なんか場違いだなって思っちゃって…」
「ま、そういうなら無理には引き留めねぇけど。でも俺は今日の格好、きれいだと思うけどな?」
そう小さく言い残せばするっと横を通り過ぎていった。
「…あ、あの!」
「ん?」
振り返る加賀に雅はにこりと笑ってゆっくりと口を開いた。
「…今日子さんが探してました。」
「え?」
「あ、ミキさんと中で会って、その時に…」
「そっか、サンキュ」
右手を挙げて振り返ると加賀はそのまま会場内に消えていった。
「…ッッ…会えたのに…なんか…複雑な感じ…」
どことなくちくりと刺さった針の痛みに気づかないようにする雅。加賀を追う様に会場の中に戻っていった。
「ちょっと、どこ行ってたんだよ!」
「あ、ごめんなさい…風にあたりたくて…」
「そうだったんだ、なら言ってくれたらよかったのに!」
プンプンと怒っている様子のアンリに出迎えられて雅はふふっと笑うしかなかった。