第36章 パンドラの箱
こうして二人はあえて大きなショッピングモールではなく、バスに乗って、少し離れた街道での買い物にすることにした。
「なんかこういうのいいね!!」
「な、たまにはってのもあるんだろうけどな」
「でも、城とこうしてって…あんまりなかったから!」
「それもそうだ」
「ね!」
そう話しながらも他愛もない話をしていた。そんな時だった。
「あっれぇ?もしかして…」
そう言いながらも二人の前にたたっと一人の男性が道を塞ぐように回り込んできた。
「…やっぱり!雅じゃん!へぇ!すっげぇ偶然!」
「…翼(たすく)?」
「覚えてんじゃん!何!今こっちなん?」
「雅?」
「え、てか、誰?新しいオトコ?」
「そう、…だけど…いこ…城」
「まぁまぁ、待てってよ!久しぶりに会ったんだからよ?飯でも行こうぜ?あ、彼氏さんも一緒に、どうです?」
「…てか、誰だよ、あんた」
「あ、俺?翼って言います。こいつの元カレってやつ。あ、でもずっと連絡も取ってなくて。その辺は安心してくれていいっすよ?」
しかしタイミング的に恐ろしいほどの物だった。昨夜元カレがどうと話をした翌日だった…
「つっても、俺らまだ行くところあるんで」
「まぁまぁ、そういう事言わないでよ!あ、俺今フリーだし。」
「関係ないから…もう別れたし…」
「お前さぁ…そういう事言えんの?マジで」
「ぁ?」
「もういい、行こう?城…」
「待てよ」
そう言って左手を捻る様に掴み、翼は気づいた。
「…ふぅん、そういう事?でも、こいつの過去って知ってます?彼氏さん」
「はな、して!」
振り上げ、何とか振りほどけた雅の腕をみて、加賀は怒りにも満ちていた。
「…どうでもいい」
「どうでもいいって言葉じゃ片付けれねぇんだよ?つか言ってねぇんだろ?どうせ」
「…ッッ」
「わりぃけど、これ以上は話になんねぇ…」
そう言って加賀は雅の手を引いて翼の前を後にしていった。