第35章 嫉妬と甘い熱
「嫌じゃねぇよ。逆に今まで知らなかったことだし?そりゃ少しはそいつの事が羨ましいって思う事もあるけど?」
「う、らやましい?」
「そりゃそうだろ。俺の知らない雅を知ってるんだぜ?そいつは」
「……そう、だね…」
そういえばきゅっと加賀に巻き付いた雅を加賀もまた抱きしめた。
「…でも、もう多分会う事はないと思う…」
「そうなのか?」
「だって、私こっちに住むし…でしょ?」
「ま、それもそうか…」
「それに、私はちょっと会いたくないかな…」
「ん?」
「…クス…大丈夫、なんでもない…」
そういえば雅は加賀にそっとキスを落とすのだった。
***
翌日、久しぶりに…と加賀と二人で雅は買い物に向かう事にした。そうは言っても加賀に連れ出されたというのが正しいのかもしれない状況だったのだ。
「で、城?今日は…何見に行くの?」
「ぁ?」
「だって買い物って…何見るのかなって思って…」
「別に?ただのんびりと買い物って時間もいいんじゃねぇかなって思っただけ」
「それって…買わなくてもいい?」
「んー?まぁね?見て回るとかだけでもいいと思う」
そういわれて雅はフッと笑っていた。
「…何?」
「ううん?のんびりと出来るし、嬉しいなって思って…」
「その代わり、」
「んー?」
「レースの話は一切なしな?」
「…え?」
「『え?』って逆になんだよ。」
「だって…」
「俺らでレースの話するってのは、これって所謂会社員とかだとよ?デートの最中に仕事の話しますってのと同じじゃねぇ?」
「…それもそっか…」
「だろ?だから無しな?」
してやったりと言わんばかりの加賀の言葉と表情に雅は少しだけ俯いて腕に巻き付いた。