第35章 嫉妬と甘い熱
ゆっくりと唇を離せば首筋に顔を埋める様に加賀はすり寄っていく。
「…城…?」
「んー?」
「手、放してもいい?」
「ん、」
ゆっくりと名残惜しそうに離せば、雅はすぐに加賀の頭を抱きしめる様にして腕を回した。
「…城が…こうして甘えてくれるの、結構嬉しかったりする…」
「ただただ、だせぇんじゃねぇ?」
「ダサくないよ…いつも速くて、強くて、負け知らずで、いい意味で頑固で、意地っ張りで…」
「なぁって、褒めてる?」
「褒めてるよ…?そんな城が、私には甘えてくれる…甘えてもらえる存在なんだって嬉しい」
「それ言ったら雅だってそうだろ…」
「そうでも無いよ?」
「あるんだよ…強がりで他の男の前では一切泣かねぇだろ…」
「……あー、」
「何?泣いた事あったりする?」
「……1回…?」
「…誰?」
「…それは…いう?」
「いえねぇ奴な訳?」
「…アンリ…」
「は?」
加賀の声が少しだけ低くなる。
「…どういう状況よ、それ」
「城がクラッシュして…でもアンリはまだ走ってるって時にちょっとけんかして…」
「…で?」
「トランクルームで頭冷やさなきゃって思って…座ったら立てなくなっちゃって…そしたらアンリが来てって…そんな流れ…」
「…ハァ…俺のせいか…」
ごろっと横に寝転がればそっと視線の高さを合わせて頬を撫でる。そのぬくもりに雅もまた目を細めた。
「…離してって言っても、落ち着くまでだからって…でもアンリも悪気あるわけじゃないし…」
「それは解ってるよ大丈夫だ。」
「…後は…ない。」
「そう?」
「だって元カレは泣く女は嫌いだとか、放っておかれることも多かったし。」
「…ふぅん」
「…あ、嫌だよね…こんな話」
そういえば視線を外した雅。しかしくいっと顎を持ち上げて加賀は笑いかける。