第30章 初めての買い物
質問を質問で返す加賀に雅は一瞬考えるそぶりをするものの、腰に腕を回して巻き付く雅。
「…どう?機嫌治った?」
「クス…治るかよ」
「そっかぁ…」
「…それで治ると思った?」
「私なら治っちゃう…」
「へぇ、いい事聞いた。」
「…じゃぁ…」
少しだけ背伸びをして、雅は加賀の首筋に吸い付き痕をつける。
「…ッッ」
「私が好きだって証拠、残しとく」
「…ハァ…」
「まだだめ?…ン…」
腰を引かれ、顎を持ち上げられればその唇は塞がれる。
「…ン…城…ん」
「つかよ、怒ってねぇよ」
「…クス…だと思った…」
「ぁあ?」
「だって怒ってたらもっと冷たくなるもん…知らない?」
「…雅のしか知らねぇよ」
そういえば小さく笑う雅につられて加賀も笑っていた。
「…知ってるさ、雅が俺しか見えてねぇ事も、誰が好きかって事もな」
「なら大丈夫だ…!」
「ん?」
「私も城君が私の事好きでいてくれるの知ってるから…大丈夫」
「…そっか…」
「ん」
ふわりと重なる唇、それに加えて何度も離れては重ね合っていた。
***
そして翌日、先に加賀はバイクに乗って新居に向かう。フィルに住所を渡して時間を決め、待ち合わせをした。
「悪いな、向こうで待ってる」
「ん!すぐ行くよ!」
荷物もあることから雅がタクシーで向かう事にした。住所を加賀にメモしてもらっていたため、それを運転手に渡す。
「…日本の方、ですよね」
「え?あ、はい」
「僕もです。」
「え?」
「妻がアメリカ人でして、こちらでも車の運転できるしってので、こっちに来ちゃって、もう十年です」
「あ、そうなんですか!」
「はい。」
「すごい偶然!」
そうしてホテルから無事に自宅に着いた雅は荷物を下ろしてもらうと礼を言ってお金を払えば中に入っていく。