第30章 初めての買い物
こうして部屋に戻ればどことなく嬉しさを隠し切れない雅だった。
「…どうかした?」
「別に?」
「別にって顔してねぇけど?」
「明日が楽しみなの」
そう答える雅にゆっくりと近づけば加賀は珍しくトン…っと凭れた。
そんな加賀に少し驚きつつも雅はどことなく嬉しそうに抱きしめられるままにしていた。
「…城君こそ、珍しいじゃない?」
「そうでもねぇよ」
「そう?」
「これからこんなんが続くぜ?」
「クス…悪くない」
「かと思えば喧嘩だってする」
「それも時には必要かもね」
「…知らねぇ事あってもいい。聞いて来い」
「ん、そうする」
「他の奴に目移りする暇ねぇからよ…」
「でもリックも意外とイケメンだよね」
「言ってる端からそれか?」
「イケメンだよねって言っただけよ?」
「あぁ言うのがタイプ?」
「だとしたら?どうする?」
凭れるだけの腕にグッと力がこもれば動けない程に抱きしめられた雅。
「…そういうなら俺の元に引き戻すだけだ」
「クスクス…私のタイプは城君よ。」
「どうだか」
「だってリックって…話し方とかノリとか…どことなくグーデリアンさん思い出させる…」
「……確かにそれはあるかもな」
『でしょ?』とふふっと笑う雅とどこか複雑な顔をしている加賀。
「…てことはだぜ?」
「何?」
「グーデリアンみたいなのが好きだって事か?」
「だから…私の好きなのは城君だってば…」
「ふぅん?」
するっと腕をほどけば窓際に追い詰める様にして加賀は雅の行き場をなくした。
「…冗談でも笑えねぇ奴」
「どうしたら許してくれる?」
「逆によ?どうしたら治ると思う?」