第29章 初めてと、久しぶりの距離
雅も聞いていてもなぜかどこか納得してしまう部分もあった。確かに走っている加賀はすごくかっこいいし、惹かれるのは解る。雅自身もそうだったのだから…
「…でも、それから何度か連絡はあった。まぁ、それなりに返してもいたし、アメリカのGPの時にはみんなで集まったりとかもあったな。」
「…そっか…」
「俺からはこんなもんだけど…後雅が知りたいことは?」
「え?」
「俺からはこれで言う事は全部。でも他に雅が知りたいことがあるなら答える。」
「えと…」
俯きながらも雅は少し言いにくそうに加賀に問いかけた。
「…今でも…?」
「ん?」
「今でもシンディさんの事、妹みたいって思う?」
「そうだなぁ、妹っていうか、リックの幼馴染位か?」
「シンディさんって…今いくつ?」
「俺よりも5つ下だから20…?今年21か。」
「…あとは…その…」
「ん?どうした?」
少し困りながらも、雅はそっと顔を上げて加賀の頬にキスを落とす。
「…ッ…雅?」
「…さっき…シンディさんにされてたから…」
「それでなんで?」
「…なんか嫌だった…そのまま残しとくの…だから…その…」
そこまで言えば加賀の肩に凭れて雅はぽつぽつと伝えだす。
「…だから…その、ね?」
「ん」
「私で上書きさせてほしい…」
「…プハ…サンキュ」
加賀の首に巻き付けば雅は加賀の耳元で話し出す。
「…シンディさんの事、教えてくれてありがと…」
「いんや、俺も遅くなった。」
「大丈夫だよ、ありがと…」
「あと、今日後でリックにも話しておくけど、なるべく入れない様に話しては置く。」
「…チームの為に?」
「あぁ」
「分かった」
そうして体を離す二人。ゆっくりと加賀が唇を寄せてくる。
「…ン…」
「さっき、途中だったろ…」
「…もぉ…」
触れるだけのキスを交わし、夕飯前に、と雅はシャワーを浴びてくると伝えた。