第29章 初めてと、久しぶりの距離
「どうしたグレ…ッッ…って」
「わりぃな、城…連れていけって…」
「城太郎!!」
グレイを押しのけて加賀に巻き付いて来るその女性。
「…待て、おい。もしかしなくても…」
「ひどい!忘れちゃったの?!」
「…やっぱり…ハァ…」
しかし雅が覗き込む様に扉に視線を向ければグレイと視線がぶつかる。そんな中で加賀は振りほどくわけでもないままに女性に巻き付かれたままいた。
「おい、シンディ…離れろ」
「なんでよ!城太郎…!」
「彼女がいる。」
「…え?」
その加賀のひと言でシンディはゆっくりと首から離れれば、ちらっと部屋の中を見る。すれば必然的にも雅と視線が重なる。ぺこりと頭を下げる雅にシンディはふふっと笑った。
「…ん!大丈夫よ!城太郎!あの子なら許す!」
「は?」
「またこっちで走るって聞いたから、そうしたらまた一緒に出来るよね!」
「…無理だな」
「どうしてよ!リックだっているでしょ?」
「リックとグレイ、それと一緒に連れてきたフィル。あとは俺と雅だ。」
「なんでよ!」
ぐいっと加賀を押しのけて中に入ってくるシンディ。上から下までじっと見ればシンディはふぅん…と呟いた。
「…ただの子供じゃない」
「お前が言うな、シンディ」
「だって!それに胸だって小さい!ウエストもくびれが無いのと同じ!ヒップだってつんつる!!どこも魅力はない!顔だって並みでしょ?まぁ、特別だってのは一つあるみたいだけど…?」
そういえばするっと雅の首元の加賀に付けられた痕を撫でたシンディ。
「…でも、すぐ捨てられちゃうよ。でも安心して?私が居るから!」
「あのな、シンディ…」
「また来る!今日は城太郎の顔見に来ただけだから!」
バイバイ!と手を振って部屋を後にしていったシンディをただただ見送るしかなかった雅だった。