第29章 初めてと、久しぶりの距離
二人の左薬指には同じデザインのリングが填まった。真っ赤になりながらも加賀は雅の顔を直視できなくなっていた。
「…城君…」
「…ッッ、悪い…今…見るな…」
「え?」
「…・・違う…じゃなくて…」
照れたようにふいっと顔を背ける加賀。それを見て雅は嬉しそうに小さく笑っていた。
「…私、嬉しいよ?こうして選んでくれて…それに、なんか…嬉しい以外に言葉でなくて…」
「…そうなんだけど…」
「何か…あった?…返す?」
「いやいい、返さなくていい…」
加賀は雅に体を向け直せば、腰を抱き寄せ、コツっと額を合わせた。
「…俺…慣れてねぇんだ…こういうの…」
「城君…ッッ」
「誰かにプレゼントとか…特に女にアクセサリーとかよ…渡したことも無くて、だから…気にってもらえたならよかったって反面…いまさら恥ずかしくなってきただけだ…」
「…ん、それでも城君が選んでくれたのだから嬉しいし大事にしたいって本当に思う…」
「ならよかった。」
するっと加賀の首に腕を回せば雅は恥ずかしそうにしながらも唇を重ねた。
「…ン…」
触れるだけのキスの後、少しだけ離れれば背伸びをして巻き付いていく。
「…好きだよ…城君…」
「ん、俺も…好きだ」
もう一度唇を重ねようかという時だった。
コンコン…
扉をノックする音がして雅はビクッと震える様に動きが止まり、すとん…と背伸びをやめてしまった。
「…ハァ…」
名残惜しそうに離れれば扉に近付いていく加賀。戸を開ければグレイと一緒に女性がいた。