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Winner【サイバーフォーミュラ・加賀】

第26章 約束


そして翌日、昼過ぎに加賀とグレイ、フィル、そして雅は空港に来ていた。

「…城君…あれ…」

そう雅が示した先には今日子が来ていた。

「…加賀君…」

少し俯き加減に名前を呼ぶ今日子の前に立てば、加賀はゆっくりと話し出す。

「辞表、出しちまったんだってな…」
「…ッッえぇ、」
「せっかく優勝したってのに。」
「…ごめんなさいね…どうしても続けれなくて…」
「そっか…」
「あなたの、加賀君のいないAOIを続ける自身が無いわ…」
「なぁに言ってんだ。『らしく』ねぇな」
「だって…!」

フッと顔を上げる今日子の目には初めて見るような加賀の表情が見えた。

「…あの…加賀君…」
「ん?」
「また、こっちに来ることあるかしら…」
「まぁ、ゼロとは言わねぇよ。」
「…そう…ッ…今度来るときには…!」
「ん?」
「…今度あなたに会うまでに…私はあなたを超すようなドライバーを育てているから…」
「…出来るさ、あんたなら」
「…ッッ…」
「俺の、俺たちの女王様だぜ?絶対に出来る」
「…加賀、君…」

そう話す会話は二人だけのものとなっている。雅はじめ、三人には聞こえていない。見えるのも今日子の表情だけ。

「…何話してるんだろうな」
「ま、ずっと長い事一緒だったっていうし?」
「…ん」
「気にすんな、雅。」
「…グレイさん?」
「グレイでいいって言ってるだろ?」
「ん…」

ちらりと時計の時刻を見れば飛行機ギリギリになりかけている。

「…時間だ、ブリード!」
「ブリードじゃねぇよ」

ふぅっと息を吐けば、今日子に背を向けて歩き出す。

「加賀君!」

ふと呼び止める今日子の声に一瞬足を止めるものの右手を挙げて振り返ることも無く、三人の元に向かっていく。

「…待たせたな」
「たく、本当だぜ」
「まぁまぁ」

笑い合いながらも加賀の左手は雅の右手を掬い取る。その背中を見て今日子は少し寂しくもなっていた。

「…元気で…加賀君…」

そう呟いた最後の声は加賀には聞こえる事も無いままに空港の中に溶けていくのだった。
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