第26章 約束
『ぅあぁああああ!!』
まだまだ凰呀からは加賀の叫び声智言えるほどの声がピットにいる今日子のヘッドフォンに届いて来る。
「加賀君…聞こえて?!加賀君!!」
しかし一旦は声が途切れたものの、今日子の声が届いていないかの様に返答はなかった。
「…ッッ」
そっと今日子はヘッドフォンを外す。そのまま隣のスゴウのチームに歩いて行った。
「オーナー!どちらへ!」
一部のピットクルーは今日子の行動が読めなかった。どうしたらいいのか…そんな事は今日子の中でもうすでに確信にも似た答えがあったのだ。
「失礼します。」
「…どうかされましたか?」
クレアが対応に入った。今日子の顔はなんとも言えない表情を張り付けている。それが演技でもなく、純粋に戸惑いと葛藤から生み出されたものだとクレアは感じた。
「…スゴウチームの、真坂さんにお願いがありまして…」
「真坂に、でしょうか?」
「えぇ、」
その会話を聞いて雅は二人の元に視線を送る。
「敵対しているのも知っています。でも、加賀君を、助けてほしいの」
「え、…っと」
「無理は承知です。ハヤト君の勝利もありますし…これで、この日でグランプリが決まる場面ですから…でも…お願いします。」
深々と頭を下げた今日子。しかしクレアは何かを言う事もなかったものの、雅が今日子の元にやってきた。
「…私は…スゴウのクルーです。」
「解っているわ…でも…お願いします…」
AOIのピットクルーも初めて見る今日子の姿に驚きを隠せなかった。
「でも…私はアンリ・クレイトー付きのクルーです。申し訳ありませんが…」
返答に困りながらも、スゴウのクルーを全うしようとした時だ。修が声をかけた。