第21章 狂おしいほどの夜
恐らくホテルについて間もないのだろう、状態になっている。シーツのずれも一切なく、荷物も開きが無い。そうは言っても荷物は小さめのボディバックのみ。
「荷物、これだけ?」
「ぁあ?…だってこの一泊だけだし」
「…そか…」
どことなくよそよそしくもなる雅を背中から抱きしめる加賀。窓のカーテンも開かれていたため、そこに映る加賀の表情も直視できなくなっていた。
「…それで?」
「それでって…えと…」
「さっき電話で言いかけたこと。聞きたいんだけど?」
くっと抱きしめる腕に力がわずかにこもる加賀のそれに雅は俯いてしまっていた。
「…雅?」
「怒ったり…しない?」
「聞いてみねぇと分かんねぇよ?」
「…あの…ッッ」
加賀の腕にそっと手を重ねれば雅は恥ずかしそうに口を開く。
「…今夜…ずっと一緒に居たくて…、それと、ずっと触れてたい…」
「…ずりぃな…ほんと…」
くるりと雅の体の向きを変えて加賀は腰を抱き寄せた。ゆっくりと顎を持ち上げれば視線を上げさせる。
「…それ、どういう意味か解ってるだろ?」
「ッッ…ん…」
「んじゃ…この間の約束もあるし…離してやれねぇけど、いいんだな?」
「…ん」
ゆっくりと背伸びをした雅。そのままふわりと唇が重なる。
「…ベッド、行くか?」
そう問いかける加賀の言葉にこくりと小さく頷いた雅を見て、先にベッドに向かう。淵に座れば『おいで』と笑いかけた。
ぽすん…と座れば自身の部屋と同じはずのベッドなのにどこか異常なまでのスプリングを感じた雅だったもののトン…っと押し倒され、シーツに沈んでいった。