第17章 止まらない、理性
ホテルに戻ると丁寧にあすかに借りたスカーフを手洗いした雅。パンっと部屋干ししておいた。洗面台で露わになった加賀の痕を見て照れながらもそっと指でなぞっている。
「…明日から…会えない間に消えちゃうよな…」
そう呟いていた。少しして食事に行こうか…という時だ。
コンコン…
「誰だろ…あすかちゃんかな…」
『はぁい』と無防備に扉を開けた途端だ。そこにいたのは加賀だった。
「…あ、」
「入っていい?」
「ん、どうぞ?」
そうして招き入れて背中を向けた時だ。後ろからぎゅっと腕が回ってくる。
「…どこか出かけるつもりだった?」
「ううん…あ、でもごはん…はって…」
「約束?」
「ううん、一人で…」
「ならいいな…」
腕を緩めて壁にそっと背中を押し当て、距離を詰めてくる加賀。
「…じ、ょう…君?」
「…何」
「何って…どうかした?」
「いや、別に」
「えと…何かあったんじゃない?シャンパン後のインタビューもどこか…ン」
重なるだけのキス。深くなく、ただ浅く、それでも雅の意識を加賀に向けるのには十分すぎた。
「…ハァ…城…くん…?」
「普通の事、なんだと思う…でも…レース後にあんな風に触れんのは…いやだ」
「え…?」
珍しく加賀が弱気にも似た様子で途切れ途切れに言葉を紡いている。
「…ね、あんな風っていうのは…ぇ…っと…」
「アンリ」
「……あ。」
思い当たる節が一つ、見つかった雅。レース後に弱った時、アンリが肩にもたれかかってきたときのあれだ。
「…あれは…深い意味とかないよ?」
「あったら困る」
「…えと、言い訳とかじゃなくて…レースうまく行かなかったときのフォローというか…」
「ならレースに勝った俺にはねぇの?」
「…城君…」
ゆっくりと離れ、視線が交わる。
「…ッッ」
頬に唇を寄せる雅。