第1章 突然の別れと心
「え、ミキさん…AOI行くんですか?」
突然聞かされたそれは雅にとってすごく羨ましいものだった。
「…まぁね。新条の所に、ね」
少し照れたように飲みの会の席でミキは雅の問いに答えた。
「…それで、今日呼び出された理由って…」
「ほら、スゴウの方は前に話してるんだけど、雅にはさ?まだ話せてなかったじゃん?それでね」
「確かに…」
そう、レース以外にもなつかれているアンリの存在がミキからの報告を『今』にさせていたのだ。
「でも、AOIか…」
「ん。あ、でもZIPの方じゃないからさ?」
「それ、…は…ッッ」
「んー?まぁ、打診があって、それから移籍までに結構かかって…抜けるのも簡単じゃないしさ。」
「そうだよね…でもミキさんの腕があるならどこでも大歓迎だよ…」
「寂しい事言わないでよ。ほら!」
そうしてカチン…っと軽いグラスのぶつかる音。弱いカクテルを飲んでいた時だった。
カランカラン…
軽いウインドウチャイムと同時に二人の見慣れた姿が視界に入る。その途端に雅はミキに詰め寄った。
「…ねぇ!聞いてない!!」
「ん?あれ、そうだっけ?」
「そうだっけじゃなくて!新条さんだけじゃないの?!」
「だぁって、新条だけだと雅すぐ帰っちゃうじゃん」
「そりゃ…恋人の邪魔は…ッッ」
「お待たせ、城之内」
「ううん、大丈夫。」
「ミキちゃん久しぶり!」
「加賀、相変わらず」
クスクスと笑いながらも話している三人。一気に表情が硬くなる雅に気を利かせたのはミキだった。